28日後とショーンオブザデッドは似てるって話
西「28日後見たぞな」
北「なんだその口調」
西「いや、良かったよ、ロメロリスペクトって感じで」
北「お前、それゾンビ映画見るたび言ってんな」
西「いや、ロメロ好きだから。もうロメロみたいなメガネに変えようかと思うくらい」
北「あの黒縁のでかいやつ」
西「桐島で隆之介君のメガネが黒縁メガネなのもロメロリスペクトなのでは」
北「パオーン」
西「出たよ、パオーンが」
北「パオーンとは言ってねぇよ!」
西「聞こえるって、本当はなんて言ってんの」
北「だから『パオーン』」
西「ほら言ってる」
北「お前のアレだろうがそれは」
西「なんの話だっけ、そう28日後だ」
北「そうだっけ」
西「そうだよ。何が良いってアレ、ラストシーン。布をかき集めて書いた言葉がHallo」
北「わかんねー」
西「いや、だからHelpじゃないんだって、飛んでくる飛行機に向かって伝えたい言葉が助けてくれ、じゃなくて、こんにちは、なんだよ。深くない?」
北「深いか?」
西「主人公たちはもう助けを求めてないんだよ。だから、俺たちは生きています。そちらはどうですかってことでHalloなわけよ」
北「あぁ」
西「何?」
北「アレじゃん。お前言ってたじゃん」
西「何?」
北「映画って序盤でテーマをアレしてるって」
西「序盤でテーマを提示するって話、したねぇ。ここでは書いてない会話だけど」
北「メタいな今回」
西「で?28日後ってなんかあったっけ。俺は気付かんかったが」
北「主人公、目ぇ覚ましてからしばらくハローしか言ってない」
西「マジで!」
北「マジ」
西「すげぇな。あと、主人公が軍の奴らから仲間の女二人を助け出すところ」
北「あれいいな」
西「何がいいって、主人公のやり口がえげつないとこ、人間なのにゾンビっぽく撮られてんだよな。仲間にもゾンビと間違われるし。あれわざとなのか?」
北「ダニーボイルはね。多分ゾンビ映画めっちゃ見てると思う。アレはフルチリスペクト」
西「フルチ?サンゲリアの、どこが?」
北「目ぇ潰すじゃん」
西「あったねぇ。フルチってそんなに目、狙ってたっけ。ああサンゲリアでも目にドアの破片が刺さるシーンあったな。他にもある?」
北「あった」
西「それは、アレだろ、目って意思の器官だから」
北「ん?」
西「目はほら、意思が宿るじゃん。口ほどにものを言うじゃん」
北「口でいいだろじゃあ・・・・・いや、合ってるかもしれん」
西「何?」
北「なんか言ってたんだって。フルチ本人が言ったかどうかは確かじゃないけど・・・あった、目は潰さないといけない、なぜならそれは汚いものを見すぎているから」
西「ゾンビを意思のない人間のメタファーだと考えると、目を潰すってのは、そいつの意思、ビジョンを潰すってわけだから、比喩的なゾンビ化なのか。汚いもの=望みのない希望」
北「多分そう?」
西「だとすると、主人公のあの行動は人間よりもゾンビよりだったのかもな。人類の存続って視点で見ると軍の奴らの、女に子供産ませるってのは正しいわけで。主人公はそんな軍人たちの世界を壊してまで、絶望の世界で楽しんで生きることを選んだ訳よ。それはもうゾンビと言っていい」
北「そうなんじゃね?」
西「だから、あの撮り方はわざとか」
北「それはそう。ダニーボイルだから」
西「ダニーボイルすげぇな!」
北「すげぇよ」
西「もう一個好きなシーンがあって」
北「何」
西「コックが女っぽいフリフリのエプロン着てるとこ、アレすごいやだなーと思って」
北「そこ?」
西「多分コックの仕事って料理だけじゃねーんだよ。あいつら女が加入したとき用にドレスとかとってあったじゃん。その中の一つらしき服を着せられてる気弱そうな兵士」
北「ああ・・・・・・」
西「あいつらそうやって心の平静を保ってたんだなって。合意ならともかく多分仕事だからな」
北「やだな」
西「服装一つでここまで演出してるからダニーボイルはすごい」
北「そこまで考えてやってるから」
西「スゲー」
西「意思といえばさ」
北「言ってた?」
西「俺はずっと言ってる。キーワードなんだよ」
北「パオーン」
西「ショーンオブザデットも見たんだけど」
北「へぇ」
西「アレも意思ってのをテーマにすると、分かりやすくて」
北「もともと分かりやすい映画だろ」
西「あれもある意味ロメロへのアンチテーゼな訳よ」
北「パオーン」
西「あの映画は意思のない人間が生き残る、ロメロ映画の逆なのよ」
北「ふむ」
西「まず序盤で、ショーンが変化の少ない生活を送っていることが問題になって」
北「ああ」
西「パブにずっといるってのはもうアレだから、半分ゾンビみたいなもんだから。ゾンビ化しても多分行動変わらないと思う。範囲広めな引きこもりだ」
北「それはわかる。あいつもそうじゃん」
西「相棒のエドな。俺、序盤のそれ見てもうオチわかったからな」
北「出たよ、お前のソレ」
西「オチわかった、はしょうがないでしょ。わかったんだから」
北「言わなくていいよ」
西「いい映画だったけどな。イギリスっぽさとか、ナイトリスペクトとか」
北「イギリスっぽさわかる」
西「クリケットとかパブとか」
北「ナイトってのはなんかあったっけ」
西「あの、序盤のハト食うゾンビ。あれ、ネズミ食うゾンビのリスペクトだから。あと、終盤の地下室にこもるのはそうでしょ、中に噛まれたやつが一人いることも含めて」
北「うーん」
西「で、俺が言いたいのは、意思ってものの方向性なのよ」
北「まためんどいやつだ」
西「意思の衝突ってのがゾンビ映画の中心で、ナイトでは戦う意思と閉じこもる意思ってのが衝突する」
北「そりゃそうだ」
西「で、最後で女がオヤジを撃つじゃん。あれは閉じこもって戦う意思を見せなかったオヤジは女にとってゾンビと同じだって意味で、だからゾンビと一緒に焼いてくれって言うわけよ」
北「それはそうでしょ」
西「ショーンではそれが逆になってて、主人公は閉じこもることを選ぶのよ。で、閉じこもらずに出て行こうって行った男がゾンビに食われる。最終的にはショーンのそういうとこが嫌いだった彼女までショーンと同じ生活になってるから」
北「ああ」
西「で、象徴的なシーンがあって」
北「何?」
西「中盤で、元カノ一行とすれ違うシーンあるじゃん。なぜか主人公の一行とそっくりなメンバーだってやつ」
北「あったね」
西「俺あのシーンすげぇ好きで、初見はシュールで笑ってたんだけど、最後元カノが軍を連れて帰ってくるじゃん」
北「いろいろあったんだろうな」
西「だからさ、あっちはあっちで映画なわけよ」
北「ん?」
西「閉じこもらないで解決に乗り出したのが元カノ一行で、閉じこもったのがこの映画」
北「なるほど」
西「あそこで二つの映画が交錯してんだよ。ショーンと、存在してない映画が」
北「ああ」
西「でも監督的には閉じこもる映画が撮りたかったんだろうな。だから、28日後と似てる」
北「どういうこと?」
西「人類としてすべきこと、つまり種の保存とか問題解決があるわけじゃん」
北「まあねぇ」
西「28日後とショーンはそれに対立する意思でもって行動してて、結果生き残る」
北「ああ」
西「つまり、エンジョイ勢優遇ゾンビ映画なわけだ」
北「それって他のゾンビ映画もそうじゃん」
西「まあ、ゾンビランドはそうだし。デイのショッピングモールに閉じこもるってる時はそんな感じだもんな」
北「だろ?」
西「だからさ、結局ロメロの手の内なんだよ。デイの時点でその方向性も示してた」
北「お前、ロメロ好きなー」
西「好き、すげぇ好き。どっかでゾンビ化して、こっそり映画撮っててほしい」
北「寝かせてやれよ」
今日のまとめ |
誰かロメロっぽいメガネ売ってる店知りませんか? |