桐島部活やめるってよ

f:id:nanisummer:20190723001313j:plain西「いいか、聞けよ。あの映画は隠キャがリア充をやっつける話じゃねーんだよ」
f:id:nanisummer:20190728203251j:plain北「それはそうじゃん」
f:id:nanisummer:20190723001419j:plain西「だろ、屋上でのあの撮影シーンの後も映画は続くんだよな。んでもって別にやっつけてねーのよ。だからこその、「俺たちは生きて行かなくちゃいけないんだ、この世界で」なんだよ」
f:id:nanisummer:20190728203251j:plain北「あれ、いいな」
f:id:nanisummer:20190723001419j:plain西「いい……」

西「だから、あの映画は徹頭徹尾ゾンビ映画なんだよ」
北「それはわかんない」
西「なんでわかんねーんだよ」
北「なんでって」
西「ゾンビ映画っつーか、ゾンビを作ろうとするけどできないって映画だな」
北「どういうこと?」
西「ロメロ映画って、ゾンビになってみると割とユートピアだと思うんだ」
f:id:nanisummer:20190728203251j:plainf:id:nanisummer:20190723001419j:plain北「パオーン」(興味のない時の相槌)
西「ロメロゾンビって別に人食わなくてもいいんじゃないっけ?」
北「ナイトでネズミ食ってたもんな」
西「人間の数が多くて相対的に捕まえやすいから人間を食ってるだけで、バタリアンのゾンビみたいに人間の脳を食わないと苦しいってのはないんじゃないか?」
北「デイの方で人間の肉しか食わないってのなかったっけ」
西「これ結構、ゾンビの根幹に関わる話の気がしてきた。サバイバルではテーマの一つにもなってるし、また今度話すか」
北「話さなくていいから」
西「とにかく俺はロメロゾンビが好きで、桐島もロメロを念頭に置いて作ってる感じがする」
北「隆之介君もロメロの〜って言ってっからな」
西「あのシーン好き」
北「わかる。オタク特有の早口」
西「だから、あの映画でのゾンビってのは他のゾンビじゃなくてロメロゾンビなんだよ。フルチでもバタリアンでもサム・ライミでもなく」
北「パオーン」
西「お前のおすすめはマジですごい。ゾンビの全タイプを捉えてた」
北「そんなことねぇだら」
西「お前にはマジで感謝してる。俺をロメロに出会わせてくれたことを含めて」
北「そんなに!?俺はそこまでゾンビ好きでもないから」
西「卒論まで書いたのに!つーかお前はそういうとこあったよな」
北「お前はそういうとこあるよな」
西「勧めたやつよりハマるところ」
北「ソレ」
西「で、本筋に戻るけど、ロメロゾンビは意思を放棄する代わりに気楽なんだよな、ゾンビ同士の争いはない。でも外側から見ると恐ろしいわけだ」
北「パオーン」
西「で、何が言いたいかというと、桐島の登場人物は、お互いがゾンビに見えてる。つまり、自分たちと違うグループに属してるやつがそう見えてる」
北「なるほど?」
f:id:nanisummer:20190723001313j:plain西「だから、序盤で同じ場面を違う視点から写すって方法をとってるんだと思う。他のグループに属してても人間なわけだから、意思はあるんだよな。でも、わからない。得体の知れない恐怖がある。例えば、リア充は外れるのが怖くて、立ち回ってる。これはゾンビになるのを恐れるゾンビ映画の登場人物と重なる」
北「ふん」
f:id:nanisummer:20190723001419j:plain西「隠キャ側は・・・まあ言うまでもねーか。俺たちの高校生活だ」
北「俺は違うぞ?」
西「違わねぇだろ。いや、そうか、お前の高校は賭け事でヒエラルキーが決まるシステムだったもんな。友人のポチとタマがいて」
北「それは賭ケグルイの高校」
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西「出身者じゃなかったっけ?」
北「違ぇよ」
西「ポチとタマはお前のこと友人とは思ってなかったかもしれんな」
北「そんな奴らはおらんけどな」
西「で、まあ隠キャはリア充にネタにされるのは嫌だわな」
北「まあわかる」
西「俺あれすげえ好きなんだよな、教師に撮らされた映画のタイトル「君よ拭け、僕の熱い涙を」
北「いいよねー」
西「いるよな、あんな感じの自分のオナニーに生徒を巻き込む教師。やりたきゃてめーで勝手にやってろよな」
北「いるかぁ?つか、このブログに関しては俺も同じこと思ってるからな!」
西「で、何が言いたいかと言うと、あの映画はダーンオブザデットってこと」

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北「うーん?」
西「桐島、これはマグガフィンなんだけど、こいつは作中で唯一何かを成し遂げられる、いわば人間として書かれてる」
北「なるほど」
西「それは帰宅部組の会話にも出てて」
北「あー」
西「部活やっててセックスもやりまくりな奴ってやつ」
北「いるよね」
西「いるかぁ?現実に」
北「いるよぅ」
西「俺みたいな?」
北「素人童貞
西「やめろ!」
北「遅漏」
西「やめろって」

西「とにかくこの映画は桐島が部活をやめるたことによって始まる」
北「タイトル通り」
西「今までは人間であるところの桐島と一緒にいることで意思のある人間のコミュニティとして成立していたのが、その不在によって崩れていく」
北「ふん」
西「部活をやめるってのは意思の放棄で、人間だった桐島がゾンビになったってことだ。主要都市がゾンビに落とされたみたいな状況だ」
北「ダーンオブザデット」
西「そう、んで理由がわかんねーんだよな。エンドロールが流れ終わっても」
北「そういうもんじゃん」
西「それが、そういうもんなのはゾンビ映画のほとんども同じ。つまり桐島はゾンビ映画
北「ちょっと何言ってるかわからない」
北「他にもあるぞ。ゾンビ映画ってストーリー的にはゾンビが主役じゃないじゃん」
北「それはそう」
西「むしろゾンビという災害の中で生きている人間の衝突とか生き様を見る映画なんだよな」
北「俺が言ったやつじゃん」
西「その視点で見ると分かりやすくゾンビ映画なんだよな桐島」
北「わかったような、わからんような」
西「吹奏楽部の女子とかわかりやすい。恋心を自分から断ち切りにいくのは、ゾンビ化しないように自殺するってことだから。ナイトとかバタリアンのあいつらみたいに」
北「ちょっとわかんない」
西「隆之介君の相方が、どうせ結果出せないならゾンビ映画撮ろうってなった時にこんなたのしいの初めてなんだよって言うとことかあれじゃん」
北「あれとは」
西「絶望的な世界で好きなことやってたのしーってなる奴。ゾンビランドハイ」
北「アレか」
西「わかるのか」
北「んでアレか」
西「そう、終盤に桐島を求めて屋上に上ってくるリア充たちがゾンビっぽいという」
北「そうソレ」
西「って俺アレでよくわかったな。で、この桐島ゾンビ映画説に欠かせないのが隆之介君で、彼だけがその本質を捉えてる」
北「例えば?」
西「まず、さっき出た顧問に切れるシーン、テーマは自分の半径1メートルだとか、等身大の悩みだとか言われて、ゾンビ映画はリアルだって返すとこ」
北「それはオタクだから」
西「いや、本当にゾンビが日常なんだと思う。その証拠に隆之介君はゾンビ好きだから、ゾンビ化した人間が見えるんだよ」
北「どういうこと?」
西「屋上にいた桐島が登ってくる映画部とすれ違うシーン。他の部員は気づいてないのに、隆之介君だけ目で追ってるんだよ。そして、人間でいた頃の桐島を求めて屋上に来る奴らにはもちろん見えてない。これってそういうことでしょ」
北「ほんとだ」
西「あと屋上での騒動があったあとヒロキと仲良くなるシーン」
北「あれいいな」
西「名シーンだな。で、あそこで、隆之介君はヒロキを撮りだすんじゃん。親しかったわけでもないのに。あそこで隆之介君はヒロキがゾンビだと感じ取ったから撮ったんだと思うんだ」
北「ああ」
西「で、でだよ!この映画が深いのは、ゾンビ映画お約束を守ってるのに、完全なゾンビにはなれないってことなんだよ」
北「どういうこと?」
西「最初に言ったゾンビになればユートピアって話あるじゃん。人類が意思を失くしてゾンビになれば、悩みのない世界が共有されるはずなんだ」
北「うーん?」
西「屋上の撮影シーンであの女がゾンビに喰われるシーンを幻視したのは、わかり合いたいって気持ちからだと思うわけだ」
北「あーわかった気がする」
西「だけど、この世界にゾンビはいない、意思があるから、あの人たちにはあの人たちの気持ちがあるから。限りなくゾンビに近づくけど、決して一致することはない漸近線的な切なさと美しさ」
北「だから」
西「だからこそ」
西「俺たちは生きていかなきゃいけないんだ、この世界で。・・・・・・深い」

今日のまとめ
パオーン(興味のない時の相槌)